日本酒で好きな銘柄を4つ挙げなさいと言われると、
この4銘柄の全種類飲んでみることが実現可能なレベルの夢である
ということで、名古屋に出張に行った際は東京じゃなかなか手に入れられない九平次を買ってくるしかないでしょう
九平次と繋がりの強いっぽい「秋貞商店」に行くと、ズラーっと九平次が並べられていた
全部で10種類くらいあったよ
一番お買い得なものでも720mlで2,000円はゆうに超える
いや〜、こりゃ贅沢だね
何を買おうか迷っていると、店主が自ら声かけてくれた
「何の料理と合わせて飲むの?」
いやー、そこまであまり考えてないですね、九平次が好きなのでどれにしようか迷っているんです
「普段日本酒を飲むのはどういうシーンなの?」
食事とあわせることも多いですけど、素というか、日本酒だけで日本酒の味を楽しもうと思ってそのまま飲むことも多いです
「うーん、それじゃまだまだだね」
ここから、熱い店主の熱い語りかけが滾々と続いた
長くなるぞーこのエントリー。
まず店主が言いたいのはこんなことからだった
「日本酒を寝酒として飲む人が多いけど、そんなんはダメだ」
つまり、寝酒で飲むような用途であればウイスキーや焼酎なんていう蒸留酒の方が向いてるし、日本酒だとしても本醸造とか、せいぜい純米酒とか。
九平次なんていう高い酒は寝酒やそのままで飲むもんじゃない、料理と合わせてナンボなんだということ
これは数多くの日本酒にこだわってる店が「ペアリング」を重要視しているし、その料理に合わせて酒を振舞うのは至極の楽しみ方ということは十分に理解している
だけれど、それを家でもペアリングを意識しなさいというのはまだまだ若輩者の自分にとってはハードルが正直高いし、肩の力抜いて楽しめないなぁと思うのも本音
「九平次は旨味も香りも強いだろ?だから意外かもしれないけど肉とか洋食とか、味の濃いものと合うんだ。刺身や和食に合わせて飲む酒じゃない」
「だからここにお酒を買いに来る人には、今日の夕飯はなんですか?と聞く。飲みたい日本酒で探すんじゃない、今日食べる料理と合う酒を探すんだ。本当に日本酒を楽しめる人っていうのはそういう選び方をするんだよ」
「君は社会人?会食とかでも、日本酒を選ぶ時や頼む時に料理と合った酒をチョイスするのが大切だよ。そういうのができれば日本酒を分かってるお偉いさんからも一目置かれるし、突拍子もない日本酒を選んじゃうと店員さんからも笑われちゃう」
なるほど、、、確かにペアリングの店で九平次のカマログに生まれてを飲んだ時は濃いめの味付けののどぐろしゃぶしゃぶと一緒に出てきたな・・・
それに肉と合わせて日本酒を飲むというのもあまり経験がないからそれは楽しそうだ
「せっかくなので九平次を2本くらい買っていきたいんです、どれがいいですかね」
「だから、どの酒がいいかじゃなくてどの料理と合わせるか、が大事なんだよ。そういう選び方をしないと」
難しい店主だ・・・気軽に質問ができない
俺としては九平次ありきで料理を考えたいと思ってるんだけど、それは間違ってるのだろうか
「今やもう九平次なんてのはブランド日本酒になってるから、どの人も盲目的に『九平次は旨い』ってなっちゃってるんだよ。どういうシーンで飲んでも、一概に旨い旨いって思っちゃう。本来そういうもんじゃないんだよ」
この言葉は刺さった
まさに今の俺だ
「九平次が好き〜」とか言ってるけど、多分本質的なところで好きになってる訳じゃなく、形から入って「九平次が好き」と言ってるだけなのかもしれない
だけど日本酒のブランドなんて全然詳しくなかった時に初めて日本酒原価バーで九平次の黒田庄に生まれてを飲んだ時に「めちゃくちゃ旨い!!」と感動して好きになった訳だから、好きという気持ちには代わりがないんだ
「一番人気はどれですか?」
「やっぱり安定してオススメできるのは、山田の純米大吟醸だね」
ノーマルの純米大吟醸はラインナップの中だと値段もお買い得な部類だから、確かにこれは買いだね
「雄町より山田の方が人気なんですね」
この言葉が、また信念の強い店主のハートに火をつけてしまった
「あのね、雄町が人気なんていう最近のブームは作られたものなの。それこそ雄町ってだけで旨いって思いこんでる、特に若い層にそういう人が多いだけ。もともと山田錦が酒米としてちゃんと作られてる米なんだから、一番旨いのはやっぱり山田錦だよ」
言ってることは正しいんだけど偏見とかが強いタイプの店主だなこりゃ・・・
でも勉強になります
「あのね、家で飲む時に是非ワイングラスで飲んでごらん。味が全然違ってくるから」
「あー、店頭に置いてあった、ああいうワイングラスですか?」
「そうそう、香りが強い日本酒ってのはこういうワイングラスで飲むと断然味わいが違ってくる」
「それは、飲み口が広いと香りがより感じやすくなったり、舌に広がる部分が広くなってより甘味を舌で感知しやすくなるとか、そういう原理なんですかね?」
「うーん、詳しくは分からないけど、俺も勉強会に出ていろいろ試してみたら、確実にグラスによる味の違いがあるんだよ」
「家にワイングラスがない場合はどうすれば?」
「その時は普通のおちょこでもいいよ。逆に香りを売りにしてない、魚に合うような辛口の酒はこういう大吟醸グラスとかで飲むと美味しくなる」
あれ、、俺が今使ってるグラスと全く同じやつ!だと思う!
「じゃあ、、2種類目は黒田庄に生まれてにしてみます」
「まぁ基本は山田の純米大吟醸とそんなに味変わんないけどね。どっちも料理をちゃんと選んで飲むんだよ」
「わかりました、詳しくありがとうございます」
「あと、普段封をあけてからどれくらいで飲み切る?」
「4〜5日くらいですかね」
「そんなにかけちゃうか・・・九平次は一度あけたら味がかたくなってっちゃう(もしかしたら柔らかくなるって言ってたかも)から、なるべく早く飲みな」
「味がかたくなるって、どういうことですか?」
「それも自分で毎日飲んで、確かめてみな。あと2種類の味を飲み比べしてみるのも面白いかもよ」
そうそう、それ!飲み比べもしてみたいから2種類買ったのです!
ということで家に九平次2本を持ち帰り、なるべく毎日2種類を飲みながら味を比較し、封をあけてからの味の違いも確かめ、さらに味の濃い料理と合わせてどうなのかを勉強しながら楽しむこととなった
課題が多い!
長くなりそうだから、このエントリーでは山田の方だけで。
改めて、醸し人九平次 純米大吟醸 山田錦 EAU DU DÉSIRです。
店主に散々グラスにこだわれと言われたけど、結局いつものグラスw
ごめんなさいw
だけどこのグラスで写真撮ってからは、ちゃんとおちょこに注いで正しい飲み方で飲んでみたよ
<1日目>
なんせ柔らかい味だわ・・・
飲んだ瞬間、「やっぱり九平次最高!」となってしまった
もう気分的に入信してるからどんな味でも多分褒めてしまうんだろう
「日本酒ってこんな味も出せるんや」と感想がこぼれてしまった
こんな味ってどんな味?と問われると少し困ってしまうけど、、とにかく只者じゃない雰囲気
推奨されるべきグラスで飲んでないので飲み口が狭いためか、少しだけ鼻にアルコールを感じてしまう
だけどさっきも言った通り入信してるからそれすら心地よく感じてしまう
何口かに一回、アーモンドスライスみたいな風味を感じる
これは日本酒飲んでて初めての感覚だ
この日は何と合わせたっけ・・・
ちょっと味の濃いめの肉を使った料理だった
いつもだったら間違いなくビールかレモンサワーを飲んでるような料理
だけど、味濃い料理に合わせるのと素で飲むのとでは正直あまり違いが分からなかった
これはまだまだ俺の舌があまちゃんなんだろう
相乗効果は本当にあるのかな?
<2日目>
ちょっとアルコールが強くなり、それにあわせて味も強くなってる気がする
これが「味がかたくなる」ということ?
<4日目>
3日目は飲めなかったので中1日
なんか、、まったりしてきてるぜ
逆に今度はアルコールっぽさが目立たなくなってる
フルーティー由来の酸味も少し感じるようになった
これはこれで好きなチューニング
この日は黒田庄のエントリーで詳しく書くけど、高級ステーキと合わせてみた
結論から言うと、ステーキと合わせても酒の個性も肉の個性も消えない
<5日目>
この日は逆に刺身と合わせてみた
スーパーで買った安いぶりの刺身
確かに、刺身とは合わないということがよくわかった
刺身と日本酒が合う理由って、刺身の脂を酒をかっ食らうことによって口の中から綺麗さっぱりに落として、酒ごと喉に落とし込むことで旨いと感じているんだと個人的には思う
というかその感覚でずっと刺身と日本酒の組み合わせを楽しんできた
だけどこうも日本酒の味が強いとそれができないね
酒の風味が強いと魚というより酒の風味がどうしても目立つから、独立しちゃってる
これが貴重な経験だということで、実は昼間に刺身と日本酒を飲んでいたので、
夜は前日のステーキと違った意味での比較をするため、アメリカ産の安ステーキと合わせてみた
ステーキ自体の旨さはまぁさておき、
これも面白い変化
<7日目>
結局飲み切るまで1週間かかってしまった
なんか味が薄く感じてきた
やっぱり限界なのか!
以上、時系列にそってここまで味を記すって初めての経験だからなんだかそわそわ
店主の言ってたことは一通り実践できた
黒田庄のエントリーで改めてまとめてみよう
結局は、九平次はやっぱり旨いじゃないかということ
決して俺はブランドに騙されて盲目的に旨い旨い言ってる訳じゃない
なんか、、まっさらながらも強い芯を感じる味だったよ
九平次全制覇にあと何年かかるんだか
まぁ奮発さえすればできるんだけどさ
そういうもんじゃないじゃん
「そろそろ九平次飲みたいなぁ」となった時に、どれを飲もうかなぁって悩んで、買って、開けるのを楽しみにして家で大切に大切に飲む
この工程が楽しいのだよ